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メメント・モリ~おくりびと [cinema]


言葉には『プラス』のイメージのワードと『マイナス』のイメージのワードがあると思います。
同じ事柄についてでも使う単語によって与えるイメージにプラスとマイナスの
補正を与えるような。
例えば「おおらかな人」と「大雑把な人」とか「几帳面な人」と「神経質な人」みたいな。

ここで一つの単語を挙げてみたいと思います。それは

『メメント・モリ(Memento mori)』

という言葉です。
ワタシ、この単語がプラスを示しているのかマイナスを示しているかがわかりませんでした。
でもこの映画を観てから少しだけひょっとしたらって思うようになりました。

01.JPG

というわけで公開後に主に口コミで、また海外から高い評価を受けている作品です。
丸の内ピカデリー1にて観てきましたヨ!


今回はいきなり結論から言っちゃいます。もうね、

『だだ泣き』 (┯_┯)

昨今のワタシには珍しく、この映画を観に行ったときは一人じゃなかったのですが、
それだけにちょっとやそっとじゃ泣くまいと覚悟完了していたにも関わらず、です!
最初ははらはらと涙が流れ出して、一旦流れ始めたらもう止めることができずに
後はしゃくりあげるのをタオルでおしとどめるのが精一杯でしたヨ!

まず脚本についてですが、随所にユーモアを含ませつつも主題である人の死を扱う
納棺師という知られざる職業を丁寧に描き出しています。
映画という媒体である以上、そこに描き出されているものは必ずしも正確なものではない
のでしょう。
現実には事故や犯罪、もしくは飛び降りや溺死などの大きな損傷を受けたものもあれば、
人知れず息を引き取り、そのまま放置されて見るも無残な状態で発見される遺体も
あることでしょう。映画である以上、そこに限界はあります。
ですが映画として見せられる遺体であっても、納棺師の手腕により清められる前後で
変わる様子は感動的ですらあります。

この繊細でかつ深いメッセージをもつ脚本を演じるキャストにも隙がありません。
主演の本木雅弘さんはすばらしい映画に当たることが多いとても恵まれた方だと思いますし、
その映画をすばらしいと言えるものにする力がある俳優さんです。
例えば木村拓也さんとか福山雅治さん辺りだと、在りし日の石原裕次郎田村正和さん
のように、何を演じてもユージロー、マサカズと言われるみたいに何を演じても
キムタク、フクヤマって言われてしまうと思うのです。
それはスター性の現われであり、決して劣るとか言うことではないのですが、本木さんは
恐らくこの映画で共演された山崎努さんや先日亡くなられた緒形拳さんのような役者さんに
なると感じます。
その山崎さんもでしゃばりすぎず、でも映画のバランスを美しいものにするステキなお芝居を
していました。
必要なとき以外は姿を消すかのようなその存在感の出し入れは円熟の俳優さんの持つ力の
一つです。
妻として本木さんを支える広末涼子さんもやはり上手いなぁと感じます。
早稲田に入学してみたりいつの間にか退学していたり結婚して子供を産んだと思ったら
離婚していたりとか、周囲のことばかり騒がれていた時期もありましたが、やはり彼女の持つ
清潔なイメージとかそれを嫌味なく持ち味としている芝居とか確かなものを見せてくれます。

それとこの人は何でこんなにいいのでしょうか。
今回もヤラれましたよ笹野高史さんにはっ!
ここで書くのは憚られるので書きませんけどあのシーンが一番泣きましたね。
また今回の笹野さんの芝居は恋のお芝居だそうです。だからこそのあの一言だったんですね。
(※あ、思い出したらまた涙が。。。)

それととても大事なことを一つ。
ワタシがこの映画を観に行った翌日の朝、ひとつの訃報がニュースで流れました。
峰岸徹さんのことです。
この映画においてはまさに要石のごとくわずかな出番でしたが、一言も台詞の無いその役は
とても難しいことだったと思います。
それを鮮やかに演じきったのはもしかしたらご自身の体のことがあったからなのかもと
いうのは見方がちと穿ちすぎでしょうか?

演出についても緩急が絶妙です。
特に緩い流れの時の演出がすごいんです。
助長にならず、しっかりと観客をひきつけるその間合いは素晴らしいです。
ここがあるからこそ、中盤で本木さんが納棺師としてキャリアを重ねていく急の部分が
軽くならないのです。
また美しい東北のロケーションも効果的に使われていて、静謐な納棺の儀式とともに
日本に昔からある美を感じました。
なんだか海外での評価が高いというのもうなずける話です。

それに加えて音楽は久石譲さんです。
チェロの旋律をメインに据えた今回の映画音楽は単体では決して印象に残るものではない
と思うのですが、あの画にはこの音楽も含まれているからこそ美しさを感じるのだと
言い切っても大げさではないと思います。
タイトルテーマの曲としてインパクトを持つものも確かに良い映画音楽だと思いますが、
決してそれ単独ではでしゃばらないものもまた素晴らしい映画音楽ではないかと思うのです。

いつか誰にも公平に訪れるそのとき。
必ず来るのになかなか真正面から見ようとしないこと。
それはいつしか『穢れ』というものに塗りつぶされてしまったのではないかと思います。
でもワタシはワタシの大好きな人が棺に納まったとき、見つめて触れて涙を流せる人で
ありたいと思うのです。
確かネイティブアメリカンの古いことわざか何かだったと思うのですが

「あなたはたくさんの笑顔に囲まれて泣きながらこの世に生まれてきた。
 だから逝くときはたくさんの泣き顔に囲まれて笑顔で逝きなさい」

そのための『メメント・モリ』であるならば、ワタシにとってこの言葉は『プラス』です。


ちょっと今回の感想文はべた褒めすぎかな?と思わなくも無いですが、あえて細かい
気になった点をあげつらうことはせずに良い気分のまま綴っておこうと思うのです。
一時に比べて最近は邦画の方が洋画よりも興行成績が良いとのことです。
そういえば「日本映画なんて」とか言う声を最近聞かなくなった気がします。
まあこゆいビックバジェットハリウッドの映画に胸焼けがしてきたということかも
知れませんが、それを差し引いても確かに良い映画が多いと思うのです。
黒澤、小津が活躍せし頃の在りし日の日本映画界とは比較にならないかも知れません。
でもそれを比較することに果たしてどれだけの意味があるのか。
この映画が海外で高い評価を受けたこと。
この事実こそが日本映画の今の力を客観的に公平に示しているのではないかと思うのです。


 


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Betty

753さんベタ褒めですね~!!
出演している役者さんも良いですし音楽が久石さんですか~
それにしても・・あのモッ君が、俳優としてここまで飛躍するとは小学生時代は思いませんでした・・・
ベタベタなアイドル映画を思い出す~@@;

ますます気になる1本になりました来年、旋風を巻き起こすのか今から楽しみです♪
by Betty (2008-10-17 10:09) 

和-nagomi

◇Bettyさん
予告でこの映画を始めて知ったときには、良い映画だろうけどここまでのものとは思っていませんでした。
でも海外での評価はもとより、近年まれに見るロングランを成し遂げたことからもこの映画のすばらしさはわかりますよね。

この映画が国内外からあれだけ高い評価を得た意味を考えるに、いわゆる日本映画の黄金期を彩った名作の数々に通じるものがあるのではないかと思うのです。
ハリウッドの劣化コピーのような派手派手しい大作ではなく、心にじんわりと染みとおる優しさに満ちた作品。
それは商品としては物足りないものなのかも知れませんが、本当に良いものはわかる人だけにわかるものではなく、万人が良いと思える。そんなことを思いました(*^_^*)
by 和-nagomi (2009-08-18 23:11) 

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