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熱風~クライマーズ・ハイ [cinema]


全編を通して原作の持つ息苦しいまでの空気と熱さを見事に映像化しておりました。

C.H.JPG

劇中のように暑い日に丸の内TOEI①にて観てまいりましたヨ!

 


横山秀雄さんの代表作であり、22年前の夏に日本で起きた大惨事である
日航機墜落事故をモチーフにした社会派ドラマです。
この作品は墜落事故自体を扱うのではなく、その事故を追いかけるメディア
そのものにフォーカスを当てたものになっています。
また過去にNHKのスペシャルドラマとして佐藤浩市さん主演で放送されています。

ワタシは原作本、NHKドラマ共にみているのですが、映画もそれに劣らず
素晴らしいものであったと思います。
あの事故に関わった新聞というメディアに携わる人たちが、あの時に体験したで
あろう緊迫感が痛いほどに伝わってきます。

物語りは「1985/8/12」からの1週間とそれから20年以上経った現代の2つの時間軸を行き来する構成になっています。
85年パートでは終始息苦しいまでの緊迫感でくらくらするほどなのですが、
谷川岳・衝立岩へのアタックをする現代パートが適度な弛緩を与えてくれます。
もちろん命がけの衝立岩登頂なのですが、そこに広がる雄大な景色が人の怨念で変色したように感じる85年パートの熱気を冷ましてくれるような気がするのです。
この全体構成のバランスは見事で、2時間半を超える尺を最後まで一気に観せることに成功しています。

中心となる85年パートにおける役者の芝居も凄まじいものがあります。
主演の“堤真一”さんはNHK版の佐藤さんに負けず劣らずの悠木像を見せてくれますし、事故現場における最前線を観客と一緒に体験し、インターネットも携帯電話も無かった当時の“伝える”ということを見せる県警キャップ・佐山役の“堺雅人”さんは先日観た「アフタースクール」における芝居とは全く違う面を見せてくれます。ホント、同一人物かとちょっと疑いたくもなりますヨ。
他にも悠木と衝突する北関東新聞社長の“山崎努”さんを始め、そこに出演する役者さんからは人の執念みたいなものが陽炎のように揺らめいてみれます。

ワタシが特に印象に残ったのは堺さんと一緒に一番初めに現場入りした若手の地方記者・神沢を演じた“滝藤賢一”さんの芝居です。
神沢は最初は無邪気に大事故の現場に立つことを喜びます。記者として一生に一度あるかないかの大舞台に立つチャンスを素直に喜ぶのです。
ですがそこで目にした後に戦場すら越えると言われる現場。
そこから帰ってきた神沢はまるで幽霊のようになってしまいます。
滝藤さんはこの映画の見所の一つでもある事故直後の御巣鷹の尾根を再現したオープンセットに立つことによって、この神沢という新米記者とシンクロしたのでしょう。
特に帰ってきてから悠木に投げかけるセリフの途切れかたにはゾっとしました。
普通のドラマとかで観ればこんな喋りかたをした時点でNGなのでしょうが、恐らくあのときには同じような喋りかたをしていた人が本当にいたのではないかと思ってしまうのです。

さて正直に言うと脚本化においては若干の粗さが見られます。
尺の関係上、悠木の家族をあのようにばっさりカットしたのは正解だと思うのですが、あのタイミングで空港のカットをインサートさせると原作を知らない人は悠木の息子が123便に乗っていたと誤解してしまうんじゃないかなぁ。
(※もちろんきちんと観ればそこにエクスキューズはあるんですけど)
またラストになるとちょっと叙情的な演出に終始してしまって、いろいろなことに対するきちんとした結末を与えないまま終わります。
特にラストのカットは原作を既読であると少し雑さを感じます。

他にも社長周りのこまごました仕掛けが必ずしも上手く機能しているとは思えませんでしたし、悠木の親友である安西の立ち位置も原作やNHK版よりも薄いものになってしまったと感じました。

ですがこの半分現実を含んだこのドラマ。
2時間半の間、観客をあの暑い日に放り込むことのできる凄まじいエネルギーをもつ作品であると思います。
そしてメディアの内実を痛いくらいにワタシたちに突きつけてくる、鋭さも持ち合わせていると思うのです。
そこで起こったことをただそのまま伝えること、真実をありのままに伝えること。
ワタシは簡単に思えるこのことを現実にやるその難しさを思い知らされました。

今もこの墜落原因には不明な点が残っていると言われます。
“それは本当に事故であったのか?”
戦前ならばまだしも、科学技術やメディアシステムについてはこの事故当時もその事故を解明するのに力不足であったとは到底思えません。
でもそこに人がある限り、真実というのは大なり小なり必ず歪みを持ってしまうのは今もこれからも変わらないのかも知れません。

家族に無念の遺書を残した犠牲者がいます。
これからもこういった事故は完全に無くなることはないのでしょう。
ただ犠牲者の思い、願いはどういうものなのか。
せめてそれだけは満たしてあげたいと思うのは適わぬことなのでしょうか。
劇場を出て今年の夏の暑さを感じながらワタシはそんなことを思いました。

 


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Betty

会社の方が試写会へ行き感想を聞いたのと、ブログで何件か記事を読んで興味はあるのですが躊躇していました。会社の方は原作を読まずに鑑賞したので、753さんの記事のように不明な点が多かったと言っていました。
観もしないで感想は言えませんが、ちょっと致命的だな・・と感じていました。
一番気になっていた堤さんの悠木!佐藤さんに負けず劣らずですか!
それは嬉しいな

やっぱり観たい♪

by Betty (2008-07-15 12:49) 

和-nagomi

Bettyさん、こんばんは (^^)/
原作&NHK版を抑えているならば楽しめると思いますヨ?
ワタシは大抵「映画→原作本」というパターンが多いのですが、
この作品に関しては逆であってよかったと思います。
つかあれだけ濃い内容の原作だと映画化するときによほど
上手く脚本化しないとと思うのです。
ですから話のつじつまというよりも、画面から伝わるあの日の
雰囲気がしっかり感じられただけでワタシ的には大満足でした☆

堤さんの悠木、いいですヨ!
巷の評判では堺さんの好演の方をよく耳にしますけど、あれだけ
良かった佐藤浩市さんのNHK版悠木に負けず劣らずの映画版悠木
だったと思います (o>ロ<)o


>DSilberlingさん、初めましていらっしゃいませ!
nice!頂き、ありがとうございます☆
by 和-nagomi (2008-07-17 00:18) 

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